Re: boot!? 3

「空いてるよ」手前の駐車場に入らなかったことを少し後悔しながら、建物の前面に並べられたクルマの列を曲がっていくと、ryoがそうつぶやく。見れば、入口からはちょうど死角になった列の一番端に一台分、白線で仕切られた空間があった。「こいつには見えてたのか・・・」不思議に思いながら、一度斜め前に突き出したbongoをバックギアに切り替えて、白い枠の中に収めていく。言うことが、いちいちごもっとも・・・こんな日は、きっと最後まで逆らわない方が良いのかもしれない。ビニールの袋に入った新品のTシャツを二枚、手にしたryoが先に立って、湯ったり館の自動ドアに向かっていく。一人じゃなかなかくぐらないのれんを、二人で左右に分けて更衣室に入る。思えば、最後に来たのも、二人の時だった気がする。しっかりナノハナたった頃だ。中は、浴場からの湯気がたっぷり流れ込んでいて、かなり蒸していた。ちょうど向かい合わせのロッカーに別れてから、汗と埃で汚れたTシャツを、べた付いた肌から引き剥がす。

入ってすぐ、手桶に湯を取り、頭からかぶる・・・これだけでも肌がさっぱりして、気持ちがいい。洗い場に隣合わせで腰掛け、さっきまでの走りを二人で分析しながら体を流す。ただ、ワタシの走りだけなのが、ちょっと淋しい。そんな二人の上に、あとから来たニセmanabuの声がする。ワタシもryoも、メガネを外すと人の見分けがつかない。向こうから声をかけてもらわないと、簡単に“失礼”してしまうことになる・・・。シャンプーと石鹸で頭のてっぺんから足の先まで、きれいさっぱりさせてから、今度は三人揃って、湯船に体を浸ける。底から湧き上がる無数の気泡が、痺れた筋肉をほぐしてくれるようだ。新しいYZ250Fが来るまで、KX85Ⅱで結構真面目に練習しているニセmanabu。「こっちに戻ってこいよ」と、冗談とも本気ともつかない調子で誘うと、まんざらでもない風だ。二人の話が、たまに見立てを要求すると、横から適当な答えを返すryo。走りはかなり鈍っているはずだけど、それでも“一目置いて”くれているのが、親としては誇らしかった。

すっかり長風呂になった湯ったり館で、ニセmanabuと別れる。こちらは・・・ひさしぶりのryoを連れて、westwoodに寄り道だ。

<つづく>