地獄の獣神 ～2/3

ふっと右に向けた視界の真ん中に、音楽雑誌『BURRN!』の最新号があった。見紛うはずのない“star child”、ポール･スタンレーが、ギターを抱え、人懐っこい瞳でこちらを見つめている。白い頬に真っ赤な唇が、ひどく艶やかだ。そして、すぐにピン！ときた。NEW ALBUM “MONSTER” COMING NOW!!・・・ポールの、40年前と変わらない二の腕の下に、そんなアルファベットが並んでいる。待ちくたびれるかと思っていた一ヶ月と半分は、あっさりと過ぎていた・・・。

3歩でポール･スタンレーに近づき、右手で、取りやすい中ほどの一冊をつまみ上げる。至近距離のポールは、相変わらず大きな瞳だ。表紙と1枚目を続けてめくると、contentsの最初に大きく“KISS”の文字。その横に「3年ぶりのニュー・アルバム「MONSTER」まもなくリリース！」とある。3年前というのは「SONIC BOOM」。これは“日本未発表”だから・・・日本では、1998年の「PSYCHO CIRCUS」以来だ。そのままパラパラとめくり、巻頭の数枚がすべて色の付いたKISSの記事で埋められていること、そして、「MONSTER」の発売日が16日じゃなくて10日になったことだけを確認して、客のいないレジに向かう。胸の中、極上のリズムが、いつの間にか8ビートを刻んでいた・・・。

＜つづく＞