ひと月ぶりの・・・ 5

11時。午前中の最初で最後が、今日の一本目。machi-sanもニセmanabuも、さっさとコースへ行ってしまった。残されたCRFは、さっき暖めたはずなのに、なかなかキックに反応してくれない。2ストエンジンじゃないから、最後までしっかり踏み抜かないと・・・モトクロスブーツの底で、上死点を確かめてから、もう一度右足を踏み込む。ババババッ・・・火が入れば、あとは右手を小刻みにひねって、破裂音を途切らせないようにすればいい。ヘルメットにゴーグルを合わせて、細いシートに腰を降ろす。クラッチレバーを手前に目一杯にぎり締め、シフトペダルを左足でチョンと蹴る。土を蹴り出す瞬間の、軽くカラダをのけぞらせるツキが・・・4ストマシンだ。

最初は軽く・・・が許されるはずもなく、コースの上は、レースさながらの気迫で満ちている。新車を慣らす前に、まずはカラダの慣らし・・・とはいかないらしい。一本目から全力疾走だ。ひと筋だけど、乾いたラインが、コースを一周している。そのラインを本気でたどって、フープスもお構いなし。半年前よりも上手く抜けられているのが不思議なくらい。周りの空気がそうさせているのだろうか・・・。二周、三周と速度が上がっていくかわりに、腕が鈍くなっていく・・・muraの愛機は、とにかく重たい・・・その重量を腕だけで振り回わしているからか、それともひと月ぶりだからか、すぐに腕が上がる。抑えの利かなくなった車体が、トルク型のエンジンに押し出される・・・。

エンジンブレーキに頼って、かけるブレーキは後ろだけ。フロントブレーキは、レバーを握ろうともしないから、何度もコースの外へ飛び出しそうになる。いい加減な倒し込みは、慣性がはね返してしまい、苦手な右コーナーでは、まったく寝てくれない。基本ができていないのを、こんな形で思い知らされるとは・・・muraの斜に構えた笑顔が、コースの脇に見えるようだった。

<つづく>