雨に・・・

血で染め抜いたように艶やかな赤。左腕に、その真っ赤な革の持ち手をくぐらせて、ひざ上丈のブーツは、黒のバックスキン。節の目立つ線みたいな指が、カラダの細さを強調するように、つり革に絡んでいる。黒と白の間に金色が走った、三色の縞が縦に流れるシャツは、膝上まで垂れていて、その上に肩から、ざっくりした編み目のポンチョを羽織っている。座ったまま、ちらと上目づかいで覗いてみると、顔の骨格がそう見せるのか、はっきりした目鼻立ちと唇の感じが、どこか上戸彩に似ている・・・。

肩を越えて伸びた髪は、ポンチョをもっと濃くした栗色に染まり、大きめなカールが湿気を帯びて、毛先は胸元を向いている。すぐ前に立たれるのが困るほど、混雑した大宮行きの、この車両の中では、文句なしの“べっぴん”だ。ただ、そのあとがいけない・・・泳ぐ視線の先、彼女の左手は、ありふれた透明のビニール傘に添えられていた。真っ赤なバッグにも負けない、できるなら原色のあでやかな傘を携えていてほしかった。雨に咲く彩りそのままに・・・。