ライムグリーン、発進。 7

<10/21の続き>

極端に下げたギヤ比で、アッという間に吹け上がりそうになるから・・・左足が忙しい。まだ慣らしは始まったばかり、ちょうど力の出る手前で、シフトアップを繰り返す。サイレンサーの口からは、黒いタールが垂れて、プラグも真っ黒なんだろう・・・。走りの方はと言えば、新品のタイヤが埃も立たない土をしっかり噛んでくれて、まったく転ぶ気がしない。気を良くして、ついつい右手が開き気味になるけど・・・がまん、がまんだ。ニセmanabuのKXが過ぎても、師匠のCRFが抜けていっても、がまん、がまん。喉に痰が絡まったような排気音が、コースの上によどみ漂う。ロングテーブルトップに低い軌跡を残すKX85Ⅱ。着地したマシンの前方で、machi-sanが右手をグルグル回してみせる。「ダメ、ダメ、けしかけちゃ」・・・独りごちて逆バンクを回り、いったん止まるようにして、スパインを越えていく・・・。

フープスでコブを渡るたび、KXのサイレンサーが“ギャン”と短く吠える。すべてがおろしたてのエンジンは、2ストらしい軽い吹け上がりをみせる。フロントとリヤのサスペンションも同じだ。何も構えず、不用意にロングテーブルトップの斜面に挑むと・・・あっさり車体が高く放り上げられる。どこにも、まったく力を入れていないのに、ググッと高く・・・「この分なら、もしかしたら跳びきれるかも?」そう思わせる空中で、目を落としてタンクを見やる・・・緑色したラジエターシュラウドが、瞳の中で左右均等に延びていた。

<つづく>