ビロードのゆらめきと、真夏の光と。

宵闇が迫る間もなく、駅前のロータリーが黒く沈み込む。赤や黄色のネオン管が、漆黒を背にしてひときわ妖しげに浮かび上がる。雑居ビルの10階、ブラインドのすき間の細い窓には、信販会社の派手なネオンが、ペタリと貼り付いている。これから冬至まで、日はますます短くなるばかり・・・それでも哀しくなるだけじゃない。エレベータを降りて暗がりの冷たい通路を抜け、表通りに出ると、歩道に明かりを放つ洋菓子店の軒先には濃い豪奢なビロードの赤を敷いた真っ白なケーキが飾られているし、北千住駅のコンコースから覗き込む駅ビルの中には、同じ葡萄色した小さな樅の木にプラチナのチェーンとガラスのように透明な光の粒が絡み合っているし・・・街はちょっとしたにぎわいを見せている。この艶かしい赤は、じきに深い緑と飾られて・・・軽やかなサンタクロースの歌が、その上から流れるようになり、一気に華やいで、浮かれ気分になる。メリークリスマス・・・深紅のビロードは、とても楽しげだけど、真夏のあきれかえるほど眩しい光が、やっぱり恋しい。