#11

予定のない土曜日は、誰にも邪魔されず、ゆっくり二度寝。雨戸と遮光カーテンをぴたりと閉めた寝室は、外が明るくなっても光がまったく入ってこないから、起きるまでずっと真っ暗なままだ。ふと目が覚めて枕元の携帯電話をまさぐると、7時を過ぎたばかり。今日は土曜日、そのまま起きてしまうのはもったいない。掛け布団を肩口まで引っ張り上げて、左に寝返りながらまぶたを閉じる。次に目が開いた時には、もう9時を過ぎていた・・・この贅沢、できたら仕事が詰まっている、平日にしてみたい。雨戸のない出窓に引かれたカーテンを開けると、真っ青な空から、光が白く散らばっていた。

厚い綿生地のカッターシャツを着ていると、日向では少し邪魔な感じがするくらい。晴れ渡った空から落ちてくる陽射しは、初冬に似つかわない暖かさをまとっている。先週、maedaさんらしい“散水”のおかげで、泥つぶてがこびりついたKX85Ⅱ・・・下ろしてから初めての洗車、そして、明日の初レースに向けてゼッケンを貼りつける・・・それが、今日唯一の予定。ひさしぶりに聞くケルヒャーの唸り声が、あっさりKXを緑色の車体に戻していった。センタースタンドの周りに落ちたMX408の赤土を流して、ざりままに何通目かのメールを返して、光と風にさらされて乾いたKXをガレージの中へ・・・明日の“装い”のために。

ゆるんだチェーを引いて、スポークの張りとタイヤの空気圧を確認。土埃を吸い込んだエアフィルターを交換してから、まっさらなフロントとサイドのプラスチックカバーに黒いステッカーを二枚ずつ、ていねいに貼りつけていく・・・#11、この新しいkawasakiとは、#11で走り、競うことにした。#274は・・・いつの日かナノハナに戻る、その日のために残して。