初レース! 8

雲が灰色に厚みを増して、ほとんど気温も上がっていないはずなのに・・・走り終わったカラダは、薄手のモトクロスジャージをはだけても平気なだけ熱くなっている。ただ、素肌に当たる風は、冬のそれだ。一気に皮膚は乾いて、表面が冷たくなった。少し遅れて戻ってきたryoも、ヘルメットを外して、火照った顔を北風に向ける。この日のために考えていたいろいろなことが、ことごとく消えてなくなり、真っ白な頭の中と痺れた右腕で走り抜けた12分間を、夢中で話し続ける。その声をかき消すように、E-Iクラスの決勝レースが始まろうとしていた。4ストマシンの唸り声が、MX408の路面を低くはい上がる。

MC独特の、張り詰めた雰囲気の中、各クラスとも相手にぶつからんばかりの走りが、そこかしこで繰り返される。スネークヒルの上で、絡み合う音を聞いていると、冷めたカラダが内側からもう一度熱くなってくる。SE-150クラスのトップ争いを最後まで追いかけて、気分は最高潮。ori-chanが走るJ-Ⅲクラスのスタートで、バーの倒れる時間が少し遅いことを確認して、またKX85Ⅱの元に戻っていく。いよいよ“本番”の始まりだ。

<つづく>