初レース! 10

ほとんど最後に、ori-chanのCRF150RⅡがチェッカーをくぐって、マーシャルがコースに残されたマシンのないことを確かめていく。ここからだと、ちょうど真正面に見えるダブルジャンプをひときわ高く跳び越えて、一瞬消えた車影は、けたたましい反響音を従えてスネークヒルを下りてくる。すでに“15秒前”のボードが掲げられて、ゲートの内側でジリジリしているマシンは、エンジン音だけをふるわせるように響かせている。両隣に4ストマシン、しかも左はフルサイズのRM-Z250なのに、不思議とKXが吐き出す連続した高音しか耳に入ってこない。オフィシャルの両手で、ボードが“5秒前”に翻った。すぐに左足のつま先でシフトペダルをかき上げ、右手を全開の少し手前で固定したまま、上半身を腰からハンドルの上へと折り曲げる。まばたきするのを忘れ、じっと瞳を凝らした先でゆっくりと鉛色のバーが落ちていく。握りすぎていた左の人差し指と中指をあわてて離すと、目の前でKXのフロントタイヤが、地面に落ちたバーを乗り越えていった・・・。

<つづく>