冬はつとめて?

今よりもっと冬らしかったはずの古に、「冬はまだ明け切らぬうちがいい。雪が降っていればなおのこと、霜が白く光っていてもいなくても、凍える寒さに急いで火をおこして・・・」と、とにかく冬が最も冬らしくふるまうのが早朝で、その時分が一番美しいと、かの清少納言は『枕草子』に綴っている。都心でも10℃を割って、ひと桁の朝。ベッドから這い出ても、まだ外は濃い藍色に沈みきったままだ。暗くて深い夜の縁に、日の出が追い打ちをかける。東の空が、一点を中心にして赤みを帯びてくる頃・・・一日で最も気温が低い「この瞬間がイイ」とは・・・この女史とは、うまく合わせていける気がしない・・・。

一時間でも遅く一日が始まれば、少しは違った心持ちになるかもしれないけれど、現実は・・・その一番凍える瞬間に、シロとネロを連れて外に出る朝。全身“着ぐるみ”の彼らも、肉球だけは裸なはずなのに・・・少しも気にすることなく、リードを張って、一直線に走り出す。あぜ道を抜けて、田んぼの真ん中に出ると・・・雪をかぶった富士の裾から秩父連峰が延び、その富士と見紛うばかりの那須茶臼岳から右手に筑波連山が濃い山容を朝焼けの端に映している。吐く息の白さの中、辺りをつつんでいる景色は、くっきりと近くに見えていた。たしかに冬には、すみきったような白がよく似合う・・・さすがは清少納言か。

それでもワタシは・・・南の風に乗って、常夏の島を羽ばたいていたい。せめて、この季節だけでも・・・。