それぞれの金曜日

「あれ、明日は走らないんですか?」・・・ほとんどU字工事と変わらない抑揚が、耳に当てたスマホから流れてくる。どんな時でも笑うように話す声を聞くのは、ずいぶんひさしぶりだ。夕べ、遅くなってからの着信は、tasakiパパから。新しい相棒となじむには「ちょうどいいから」と予定していた“KASAWAKI運動会”はそう、祝日の明日。三連休の初日だった。舞い込んできた仕事がうまく進まなくて、週間天気予報と同期するように“雲行き”も怪しくなって・・・とうとう“休日出勤”する破目に。下手をすれば、土曜日も危ない・・・こちらもひさしぶりに、灰色の週末になっていた。

kyo-heiくんの就職先が決まったこと、ko-heiくんが高校の自転車部で活躍していること、そして、乗り手の居ないKX65が、ガレージにそっとしまわれていること・・・。ryoが留年を重ねていること、おかげでXR230を手放したこと、本当に黄色をやめて緑色にしたこと、そして、明日は仕事で出られないこと・・・。他にも、お互いどこまでのことを話していて、いつから会っていないのか、わからないぐらい。コタツにもぐり込んで、その時間を埋めるように、長々と話が続いていく。結局・・・tasakiパパの誘いもあって、“第2ライダー”としてMX408へ行くことになったryo。マシンをのぞくすべての用意を整えて、先に2階へと上がっていった。

明けて、金曜日の朝。雨はまだ落ちていないだけで、はっきりそれとわかる空模様だ。液晶画面の向こう側では、zipのお天気姉さんが、コートのえり元をマフラーできつく巻き上げて、昼までには北関東でも雨が降り始めること、気温が1月中旬並に低いこと、そして、その雨はしとしとと降り続くことを、すぼめた肩の間から伝えていた。まだ、ヘッドライトの灯りに頼らなければいけない時間に、ryoと荷物を載せたcarryが出ていく。それから1時間ほど、いつもよりは少し遅れて、駅までの道にBongoを走らせる。「何とか持つかな?」・・・見送る時に仰いでいた空からは、あいにくの雨粒がこぼれ始めていた。