ラストファイト! ~3

だんだん濃くなる宵闇を背に、ガタッガタッガタッとキャタピラの音が前後している。何度も繰り返しホームストレートを均すsaitoさんに、ハンドルの右にあるレバーを素早く二回引いて、パッシング。それから運転席の窓を全開にして右腕を大きく振りかざすと、ブルドーザーの上からも応えが返ってきた。そのままbongoを左回りに反転、ニセmanabuのハイエースに続いて、コースを後にする。旗振りの小遣いをryoがポケットにしまいこんで、今日はお店じゃなくて湯ったり館へ・・・いつもの小道を上らずに、曲がりくねった田んぼ道にbongoを走らせる。“King Of The Night Time World”がフェードアウトしたスピーカーから、今日だけで何度耳にしたかわからない“Hell or Hallelujah”が静かに流れてきた。

日本盤のみのボーナストラック“King Of The Night Time World”。ポール・スタンレーの「・・・KISS ARMY!」の掛け声と、トミー・セイヤーの大きなヴィブラート&ハウリングで始まる名曲は、アルバム『Destroyer』に収録されている。ただ、どうしてもオープニングの“Detroit Rock City”に隠れてしまって、少しだけ影の薄い曲だ。「何でこれにしたのかね?」と、助手席から素直に訊かれて、うまく説明できなかったけど・・・「ずいぶん上手いのを選んだな」と、妙に納得できる、巧みな選曲と言うことだけは確かだ。こればかりは、長いことKISS ARMYやっていないとわからない・・・かもしれない。そんな理由にならない理由を口にしながら、右に左にゆっくりとbongoのハンドルを動かしてやる。二車線の太い坂道を上っていくと、左手の奥に湯ったり館の薄灯りが見えてきた。

<つづく>