ラストファイト! ~4

「コータローさんに言われちゃった・・・何か、伸び悩んでるねって」。

泥と汗をさっぱり洗い流してから、先に湯船に浸かっているはずのむさ苦しい男を探してみても・・・裸眼のワタシに、やはり人の判別は無理だ。肌色の塊りが輪郭も無く、ただぼんやりと湯船の内や外に映るだけ。そんなことは百も承知と、湯船の縁で、にじんだ右手が揺れている。浅い湯に足を入れ、その横を通り過ぎたところで、カラダを湯に沈ませる。湯船の端からは勢いよく泡が噴き出していて、ずっと当たっていると肩甲骨の辺りがこそばゆくなってくる。話すことと言えば、さっき終わったレースのことばかり・・・黄旗を片手に、コース脇で見ていたフープスの走りは、うねりに合わせてカラダ全体が上下に動いていて・・・走り慣れているだけあって、きれいな走りだった。ただ、また少し丸くなったカラダは、他では動きが鈍くて、せっかく下ろした13年式のYZ250Fも、ちょっぴり哀しそうに見えた。伸び悩んでいるのは、良く分かっているらしい。だから歯がゆいのだろう・・・一瞬でもオープンクラスの2位を走り、「あれだけ離されたら・・・普通、心が折れるけどね」とryoが感心する粘りで、彰台の一角を手中にしたのに、あまりうれしくはないようだ。okano師匠もしきりに「ずいぶん速くなったよな」と繰り返す走りが、もうひと伸びするには・・・絡んで走れる相手が欲しいところか?そう言うことでは、師匠たちに囲まれるワタシは・・・果報者、恵まれている。

<つづく>