ラストファイト! ~5

たとえ最後尾になっても、決して“ゆるむ”ことのないフルサイズオープンクラスの走り。見ているこちらが、つられて走り出したくなるような周回が重ねられ、その中にニセmanabuの影もくっきりとあった。でも、それ以上に見物だったのは、イバMOTO名物KLX110ワンメイクの“S110クラス”だ。そのジャンプは、とてもピットレーサーとは思えない角度と飛距離を見せるし、直線での加速は尋常じゃない。一緒に走れば、カモにされそうな連中が、小さな車体を深い泥にぶつけて走り続ける・・・その最終ラップ。“女神”は、やわらかな最後の右コーナー、そこからフィニッシュラインまでの短い直線に、涼やかにたたずんでいた。

時間にして5秒足らずの間に、2回も順位が入れ替わるとは、誰が予想できただろう。狙いどおり、最終コーナーでインを奪い、勝負はついたはずだった。それなのに相手は・・・引き下がるどころか、最後まで諦めようとしなかった。続くワダチだらけの直線で交わされて・・・なじみの#92は、フィニッシュラインの先で、マシンごとバタリと路面に崩れ落ちた。手にした2番手は、数秒でするりとこぼれて、たちまち消えてしまった。ピットレーサーとは対照的にひょろりと長いカラダが、折れ曲がるように褐色の土にへばり付いている。その一瞬の光景に・・・いつしか指の関節が痛み出すほど、ギュッとコブシを握りしめていた。

チェッカーが振られるまでわからない。そういう“勝負”がしたかったけど・・・ワタシのKX85Ⅱは、最後まで前には届かなかった。いくらsudaさんのCRF150RⅡが相手でも、傍にいないと格好がつかない・・・勝負を捨てることはしなかったけど、その背中を見ることは、ついにできなかった。終わったばかりの走りを思い出しながら、ゆっくり天を仰ぐと・・・西からは灰色の雲が広がってきていた。

<つづく>