小春日和

ずいぶん朝寝坊をしたせいで、太陽はすっかり高く上がり、窓の外が眩しく光っている。遅めの朝、休日らしくたっぷりめに珈琲を落として、くすぐる熱い香りと一緒に苦い茶色をすすりあげる。昨日洗い残したバスタオルを洗濯機に放り込んで、ゆっくり時間を掛けてカラダを目覚めさせる。陽が射し込まない玄関で、シロとネロが鼻を鳴らし始めても、お構いなしに時計の針だけが進んでいく。

待ちくたびれた二匹を連れて玄関の扉を開けると、ふわっとした風にカラダが包み込まれる。ずいぶんゆるんだ空気に、陽射しがたっぷりと振っている。乾いた田んぼの土が、シロの足下で、パラパラと音を立てるように崩れた。こんな「絶好のバイク日和」に限って、ホームコースはレースが入っていて・・・大人しくしているしかない日曜日。遠くにマルチエンジンの音が響いていた。

うっすらと白を刷いたように、やわらかな青が頭の上に広がっている。河川敷の土手の上に、茶臼岳と那須連山の雪景色が覗いている。西風が強く吹いているのにも気づかないほど、おだやかな日和だ。たまに、こうした春が訪れてくれれば、苦手な冬も何とか乗り切れるかもしれない。

陽射しを浴びた肩甲骨の辺りが、徐々に熱くなってくる。安物のベンチコートは、表の生地も裏のボアも、まったく“呼吸”しないから、熱がこもる。北風吹きつける寒い朝にはもってこいだけど・・・今日は邪魔なだけ。シロの舌が、アスファルトの上、だらりと黒く垂れていた。