宴のあとで ~後編

<12/15の続き>

外の駅舎から、若い男の声が流れてきた。閉めきられた車内からでもはっきりと聞こえる、よく通る声質だ。ただ、何かに慌てているのか、うわずった調子で何度も言い間違いをしている。それは、事態が普通じゃないことを伝えていた。せんげん台の先、武里駅一ノ割駅の間で人身事故があったこと、付近を走っている電車は上下線ともに停まっていること、そして・・・しばらく電車が動かないことを、何度もつかえながら、繰り返していた。復旧までには相当の時間を要することと、まったく見込みが立っていないことは、こうしたときの常套句なのか、それなりにすらすらと続き、アナウンスはよどまなかった。

運転再開は22時40分の見込みで、警察の現場検証次第では、その時間も前後すると伝えられたのは、電車が止まって20分ほどしてからだった。案外すばやい告知に感心しながらも、開放されてしまったドアから吹き込む夜気に、両方の脚をすりあわせてryoからの電話を待つ。こちらは思いの外時間がかかって・・・予想していた時間を10分ほど過ぎて、「駅前に着いた」と電話が入った。携帯を手にしたまま、初めて降り立つ大袋駅は、こぢんまりとしたプラットホームが、細くまっすぐに延びていた。駅の造りと似た、かわいい駅前には、人がまばらにたたずんでいて・・・・薄い灯りの漂う中、白いcarryが、そのすぐ向こうに見えていた。