うたパス 2

借りている駐車場は、アパートの住人との共有空間。通りから少し入ったところにあって、周りが砂利を打っただけの粗末なものばかりなのに、ここは簡易アスファルトで整地されている。白線がいつまでも明るい色を失わず、駅には少し歩くけど、バイクも安心して置いていけるのが気に入っている。その白線の中、ちょっとだけ左に傾げたbongoから、黒く沈んだアスファルトの上に降り立つ。せっかく暖まった足先が地面の冷気を吸い上げて、とたんに冷たくなった。

コート代わりに着ているパーカーのジッパーを首まで引き上げる前に、ワイシャツの胸ポケットに入れていたスマホを取り出す。暗証番号を入力して、ホーム画面を開くまで・・・ずいぶん時間がかかるようになったIS03。そこからいつもなら、かわいいリスのアイコンをタップするところだけど、昨日からその右下にショートカットしたアイコンを触るようになっている・・・「うたパス」だ。「Best ヒット J-POP vol.12」を選んで、最初の曲は・・・“金爆”の『女々しくて』。新しい朝、歩幅は大きめに、つま先が上を向くようにして、まっすぐに歩いていく。

<つづく>