うたパス 1

うっすらと水滴の浮いたアルミ扉を開いて、さっき戻ってきたばかりの砂利をたどり、bongoに乗り込む。ビニールシートのひんやりとした感触がチノパンを通り越して、素肌に触る・・・いつもより3分遅れの朝。挿したキーを回しながら、あわてて2速にシフトして、静かに左足をクラッチペダルから離していく。シフトレバーもハンドルも、すっかり凍えていて、指を立ててつまむようにして通りを曲がり、ギヤを上げて走る。この季節、動き始めたばかりのクルマの中は、何もかもが冷たくて・・・風が当たらないことをのぞけば、外に居るのとそれほど変わらない。

カーオーディオのディスクは、『MONSTER』から『ALIVE Ⅳ』に入れ替えたばかり。流れる曲はLOVE GUN。ポール・スタンレーらしい感性のシャッフルナンバーは、心ない輩に言わせると「日本語じゃ成り立たない」詩だと・・・当たり前だ!アメリカンバンドの曲に日本語が似合うはずもない。LOVE GUNはLOVE GUN、それでいい。そんな戯言をふり払うようにバックコーラスのパートでリズムを刻んでいると、ようやく水温計の針が上がってきて、やっと温風を送り出せるようになった。右鼻が詰まってうまく高音が出てこないのは・・・先週の金曜日と同じだ。

<つづく>