Merry Christmas! 6

何度か“むすんでひらいて”を繰り返して指を動かしてから、防寒用のカッパはかぶらず、シフトペダルを踏みつけ1速に入れる。右手と左手をうまく同期させると、前回から2コマ落とした53丁のリヤスプロケットが、KX85Ⅱをしなやかに押し出していく。太陽が高く上がったせいで、パドックからコースへ向かう路面は、ほとんどの凍りが溶け出して、ベチャベチャと音を上げる。開け放った右手をあざ笑うように、ホームストレートを駆けるマシンのエンジンが不規則に唸りを上げていた。

“ひと開け”でフケ切ることなく、素直に土を掻き上げて、ホームストレートを加速。第1コーナー、第3コーナーにはカーブの曲率にあつらえたように、浅いワダチが印されている。その曲線にラインを合わせて、フープスに入る。日向に波打つフープスは、まっすぐ走れていれば、問題なく跳べていける乾き具合。最後のコブから大きな左カーブを2回、その間にあるバックストレートは、光が届かずに凍ったままだ。ゴツゴツした路面を抜けると、土がまたやわらかに照り始めた。

右バンクの途中から内側に切れ込み、小さなコブを跳んで、ロングテーブルトップジャンプ。短い加速にギヤが合ったのか、リヤタイヤが斜面を力いっぱい蹴り上げて、かなり高く遠くまで運ばれていく・・・気を強く持って挑めば、跳び切れる日も案外近いかもしれない。苦手な逆バンクには、固くていびつなワダチが、深く刻まれていて、思わず右手を完全に閉じてしまう。スパインを乗り越えて、ようやくスロットルを開くと、リヤタイヤが左に流れて、瞬間、均衡を失う。

今日の“フラッグ”、コース脇で黄旗を携えているのは、machi-sanだけだ。そのmachi-sanの視線を感じながら、斜めになったKX85Ⅱを右手で加減して、続くダブルジャンプをまっすぐ舐めていく。今日の台数じゃあ仕方がないけど、この視線でまったく気分が違ってくるから・・・目立ちたがり屋には、これも大事な“追い風”、跳べないところも跳んでみたくなるから不思議だ。そこから再び暗がりの中、スネークヒルの入口で、固まったワダチがいきなりフロントタイヤを弾いた。

<つづく>