Merry Christmas! 9(完)

ひとしきり年末の挨拶をして店を出ると、信号待ちしているクルマの列に師匠のハイエースが見えた。ワダチの走りを反芻するだけの気分を変えて、ハイエースの後ろに着いていく・・・いつもの取手経由ではなくて、ひさしぶりに栄橋を越えて帰る、利根川に沿う経路だ。師匠は裏道を知っているから、栄橋まではすんなり連れていってくれるはずだった・・・そのとおりに、狭い農道や県道を右に左につないでいると、栄橋北詰の交差点が見えてきた。目の前の信号は青、すぐ前を走るハイエースが黄色で左折していくのを見送って、bongoを停止線にピタリと合わせる。「iguchi師匠、来年もよろしくお願いします!」橋の上をのんびり走る黒い車影に向かって、小さく頭を下げてみた。

利根川の南側を西へ走る。この土手道は、信号が少なくて、おまけに滅多に赤くならないから・・・真っ暗だけど、走りやすい道だ。常磐線の鉄橋をくぐり、国道6号線の下を抜ければ、いつもの農道に出る。ここからは慣れた一本道。利根運河まで走ってから県道に上っていくと、まだ6時前なのに、前にも後ろにもクルマが見えなかった。野田の市街地から伸びてきた県道を北へ向かって右に曲がる。ひとつ目の交差点、角が灯りに溶けている。練習帰りに立ち寄るセブンイレブンが、ほんのり暖かな光に包まれていて・・・自動ドアの横に、パドックでもよく見る緑色のテントが張られていた。その下で、高校生らしいアルバイトの娘が二人、鶏のもも肉とケーキを大げさな身振りで勧めている。女の子には似合いの赤と白・・・華やいだ嬌声が、風に乗って夜気に流れていった。