春遠からじ 5

二本目はCRFにryoが、KXにワタシがまたがり、“今”のナノハナの組み合わせで、コースへと走り出す。南の空では太陽が、さらに高度を上げていて、その日向をryoの駆るCRF150RⅡが先行する。第一コーナーを回って、二台が土煙を立てる。暖められた空気がカラダにまとわりついては、バックストレートの陰に落ちる。指先にも、しっかり血が通って、ずっとレバーに添えた左の人さし指が、軽快に半クラッチを操る。二つの2連ジャンプ、そのどちらも跳んだりしないから、“昔”のナノハナのように、目の前から居なくなることはない。ただ、4ストのCRFだからか、それとも、それにうまく合わせて乗っているからか、気を抜いて回っていると、立ち上がりで“半歩”遅れてしまう。フープスの8つのコブにも、無駄に車体を暴れさせることなく、控えめな排気音を残して抜けていくryo。先週よりもはるかに乾いた土の上、ラインを自在に選んで走る背中に・・・少しキレが戻ったような気がした。

フィニッシュラインを左右に分かれてまたぎ、そのまま加速。続く最後の左コーナーのバンクに、CRFが両輪をこすりつけていく。その手前で、小さくハンドルを切り、インにもぐり込むKX。互いに驚くほど、いつもとは真逆のラインを取って、並ぶようにホームストレートを駆け上がる。第1コーナーの直前、顔を見合わせて・・・ここで“攻守交代”だ。

<つづく>