タロ追憶編 ~前編

毎年、この時季になると・・・白と茶のまだらな姿を思い出す。2月は、タロの生まれ月だ。居なくなってから、もう2年が経とうとしている。あの震災を経験することもなく、薄いガラスに挟まったタロ。地面にべたーっと腹ばいになって、アゴを突き出し、ドングリ眼で前を見つめている。何枚もある中で、一番タロらしいと選んだ姿は、今も心の中にある。

タロの横にはミロとゴン太の遺影が並んでいる。ミロが「もう助からない」と寝込んでしまったとき、何かを感じたのか寄りつくことをしなかったタロ。そして、ミロがいなくなると、すっかり生気を失って・・・後を追いそうなぐらいに弱ってしまったタロ。シロがやってきたのは、ちょうどそんな時だった。

面白半分に連れてきた、ご近所で生まれたばかりの真っ白な子犬。恐る恐るタロの目の前に置いてみると・・・傷心の母性が刺激されたのか、お尻から鼻の先までペロペロと舐め続け、まるで離れようとしない。結局そのまま我が家の一員となったシロ。そのシロと喧嘩をするようになったのは、あの冬になってからだろうか・・・。

オスとメスじゃあ、元々仲良くできなかったのかもしれないけど、タロはシロとほとんど喧嘩をしなかった。散歩も一緒、河川敷に放して遊ばせても、呼んでも帰ってこないだけで、心配することなんて少しもなかった。それが急に喧嘩をし始めて・・・しかもタロから一方的に。変わったことと言えば・・・タロが老いてきたのが、ちょうどその頃だということぐらい。

<後編に続く>