立春の夕風

ちょうど駅に向かって歩くところで、ポツリポツリと雨が落ちてきた。傘をさしているサラリーマンの背中を、黒いモッズコートのフードを被った学生風の若い男が追い越していく。折り畳みの傘を出すほどでもなく、マウンテンパーカーのフードを被るか迷っているうちに、四角い駅舎の軒下にたどり着いた。薄い曇り空の下、少しの湿り気と昨日の名残でゆるんだ朝。2月4日、立春。暦の上では今日から春だ。

雲が消えた空に、太陽がきらめき・・・注ぐ陽射しが、くっきりとした影を歩道に落としている。日陰に入ると、ちょっぴり空気がひんやりするけど、Yシャツの上に羽織ったパーカーは、前をはだけてちょうどいい。入口の扉がしっかりしている、暖房の良く効いた店ばかり選んでいたけど・・・今日は、あまり気を使わなくて良さそうだ。明るく開放的なガラス張りの店内で、肉野菜炒めを注文した。

17時からの会議に合わせて、16時40分に田町駅から三田口に歩いていく。暮れはじめた街は、人工的な灯りとの狭間でゆらゆらと揺れている。その揺らめきに流れる風は、生温かくて、立春らしく春を思わせる。日本の春は出会いと別れが密集する季節・・・夕の風に吹かれて、カラダは心地良いはずなのに、どこか物悲しげな感触を覚えた。今年の春は・・・どんな出会いと別れが待っているのだろうか・・・。