かかってこい!

電柱の上から射し込む灯りは、手元を明るくするほどには強くなく・・・黒いタイヤは、いくら目を凝らしても、輪郭と空間の境がぼやけている。急いで家に帰ってきて、夕食もそこそこにガレージから外へ出て、キャリーの後部に座りこんだ。白いコンクリートが、薄い明かりの下、ぼわっと浮かび上がるように光っている。その上に、黒褐色の金属製チェーンが、梯子の形で延びている。十年以上も前のことだから・・・いったい誰からもらったのかもわからない、軽自動車用の安価なタイヤチェーンは、それでもスタッドレスタイヤを履いていない我が家の3台の中で、キャリーだけを“使い物”にしてくれる唯一の道具になった。もう、いつ取り付けたのか覚えていないほど、時間が経ってしまった今日、ケースの中でボロボロになった説明書をよく読み、何度もやり直しながらジャッキアップしたリヤタイヤに、片方ずつ、潤滑油で妖しく光るタイヤチェーンをはめていく。ちょうど『ラストホープ』を見ているはずの時間を全部使って、ようやく作業が終わった。暗くてよく見えないし、左右でコマ数が違っていたりして、ちょっと不安は残るけど・・・準備は完了。日付が変わる頃から、雪が降り続ける予報・・・でも、今度は準備万端だ、かかってこい!white monster!