ヘタクソ! 5

<2/10の続き>

凍った土が、表面から少しずつ融け出すと・・・さらに始末が悪い。乾いていれば高速の左回りも、車体を左に傾けるだけで外へとタイヤが逃げていく。傾ける角度を浅くしたり、“クセ”になってレバーに乗せられた左の人さし指を引き離したり・・・何とかKX85Ⅱなだめながら、もやっとした気分でバックストレートに入っていくと、弾ける高音を響かせて同じ色のマシンが2台、後ろをせっついてきた。

そこからロングテーブルトップを跳び上がるまで、どうにか前を抑えてきたけど・・・苦手なスパインの手前で、とうとう乾いた金属音に真後ろから迫られる。ダブルジャンプを力無く跳び出し、スネークヒルに続く鋭角な右コーナーは、張り合う気も失せて・・・彼らに前を譲ったはずなのに、それが余計なことだった。

インベタにして避けたワタシの左横を、子どもたちの駆る2台のKXが続けざまに被せてくる。その勢いと音に気おされて・・・スロットルを完全に閉じていた右手が、ブレーキレバーを握り締めたまま動かなくなった。推力を失くしたKXは一気に右へ崩れ落ち、右脚で支える間もなく、ハンドルバーが右手ごと、固い路面に突き刺さった。

<つづく>