ハルノヒカリ

太陽が力強さを増して、昼下がりの街が明るく華やいでいる。低層のビルに囲まれた駅前のロータリーも、陰に埋もれることなく、本来の色で光を反射している。例年に比べて“低空飛行”の気温も、この時間になれば、ほとんど気にならない。陽射しが背中から首筋に触り、そこだけホッとする。もう、冬の弱い光ではない。十分に高度を確保した太陽からは、春の暖かな陽射しが降るようになっていた。

さすがにビルの間を吹き抜ける風は冷たかったけど、間違いなく、季節は先に進もうとしている。冷たさの中にもゆるんだ空気があふれてきて・・・一日、一日と、その割合が濃くなってくる。ハイヒールが歩道を叩く音も、固く響くことを忘れて、ちょっと低い音がタイルの上に刻まれていく。いつもより少しだけ腹をいっぱいにしたくて・・・安くて量の多い中華の店に入って、油淋鶏を注文する。

メシ友の白飯を半分いただいて、予想以上に腹が膨れあがる。店を出て歩きはじめた歩道には、光をまとった風が流れていた・・・。