ガンバレ、師匠!

「ヤバっ」

カラダとフロントタイヤが右コーナーのイン側に残ったまま、右手の動きに鋭く反応したリヤタイヤが、派手に右へと流れる。反射的にハンドルを右に当てて、左足を地面にすりつけながら、倒れかけた車体の均整を取り戻す。もちろん、右腕に込められたチカラは緩められて、KX85Ⅱが加速を止めた・・・。その外側を、赤い4ストロークマシンの排気音が抜けていく。見事にあっさりと・・・真後ろを走っていたokano師匠だ。何とか転ばずにすんだものの、先週iguchi師匠の前で見せた「あわやスリップダウン!」を、今日も、そして同じところでokano師匠にも見せることになるとは・・・揺れの収まったKXの前、直線の中ほどにあるテーブルトップの先に、師匠の細い背中が消えていった。明日はMCFAJの本番。いつもとは違う迫力が、その後ろ姿ににじんでいた。