北斗星

北千住まで帰っていたカラダを、もう一度日暮里まで引き戻したのは、まだ仕事に懸命な仲間からの電話だった。多くの人に楽しみな連休は、ワタシにもその男にも同じはずなのに・・・年中無休の取引先は、なかなか休み気分にはさせてくれないでいた。うつむき加減で日暮里駅のホームの上、何本目かの下り電車を見送った後だ。窓ガラスを琥珀色に染めた群青色の車体が、東北本線の線路を北へとすべっていった。在来線よりも重厚に、それでも少しだけ速く・・・帰宅ラッシュのざわめきなど気にもかけずに、静かに走り去っていく車両。行先表示板には札幌の文字、夜通しかけて東日本を縦断し、津軽海峡をくぐって北の大地へと向かうのは「北斗星」。いわゆる“テツ”ではないワタシでも、この寝台特急の名前はよく知っている。やわらかな灯りを宵闇にこぼしながら、目の前を行く「北斗星」。いつか、その優雅な揺れにカラダを預けて・・・北帰行としゃれこんでみたい。郷愁を感じる、このなつかしい青が、消えてなくなる前に。