日本グランプリ

ひときわ大きな拍手が、そのまま手拍子になって・・・最後のセクション、第12セクションのスタート地点に視線が集中する。まっすぐに池に向かうフロントタイヤ、太ももに刻まれた“REPSOL”の文字が、傾きかけた陽射しを受けて橙色に浮かび上がる。#5は、さらに手拍子をあおる・・・ここは、彼にとっての“ホーム”。そうした演出に、見ているこちらも興奮してくる。先発した#3、ここまでトップを競っていたファハルドが、この最終セクションを失敗、あろうことかクリーン直前のロックセクションで失速して、まさかの“後退”を喫している。彼が減点“5”をもらっているのは、もう全員がわかりきっているし、表彰台の真ん中が見えていれば、なおさら気持ちが昂る、モンテッサホンダの排気音が大きく響き、それに合わせて手を合わせる音も膨れていき・・・フジガスが、池の中にフロントタイヤを落として、しなやかにセクションを泳ぎ始める。一度だけ足を付いて減点“1”のまま、最後の難所、岩盤に斜め左のラインから入っていく・・・。

猛々しく響いていた排気音が、一瞬途切れ・・・ふわりと岩盤の先に跳び乗った車体。そのまま右、左と切り返して、最後のゴールラインを跳び越えると・・・この日、一番の拍手喝采にセクションが包まれていった。暫定首位。この結果に、フジガスが右手を高々と天に向ける。斜面にあるその姿へ、さらに拍手が高まって・・・声援が祝福へと変わっていく。何か「日本人でよかった」と思わせる瞬間だった。素敵な一日に誘ってくれたtasakiパパに感謝だ!