いつ降ったのかわからないけど、たしかに空気が湿っていて、アスファルトのへこみに雨が溜まっていた。わりと強めに風が吹いて、宵闇に浮かぶ藍色の街並みが、ごうっと音を立てる。「5月って、こんなに涼しかったっけ」と思わせる通りは、朝方お天気おねえさんが教えてくれたとおり、スーツの上着がちょうどいい感じだ。ひさしぶりにメールを寄こした歌トモは、この気温の乱降下に体調を崩してしまったらしい。お互い、ちょっと忙しくって・・・しばらく歌いに行っていない。「前にお渡しした“嵐”は、全曲完璧ですか?」と訊かれて、さすがに全部は無理。「3曲、聴き流してます!」とメールを返した。

今では10曲は歌えるようになった“嵐”・・・どれもこれも歌トモと知り合わなかったら、覚えることはなかっただろう曲ばかりだ。歌トモにちょっぴり感謝しながら・・・「来週は歌いに行けるかな?」、雲の広がる夜空にむかって、口笛をひとつ鳴らしてみた。