コースにて~“オープニング”ラップのキオク

第1コーナーを右に曲がり、小さく左にひねる。そこからもう一度左、ほとんど直角に折れて、テーブルトップジャンプの斜面をとらえる――浮き出た砂利と細かな砂ですべりやすいことぐらいで、ここまでは前と同じ。イン寄りのラインから立ち上がると、ちょうど右手が開け始めるあたりで、土が削れてへこんでいた。

テーブルの上に落ちてから、弾むようにして斜面を駆け下りる。手前に2つ、コブが増えたフープスまで、マシンを立て直す暇がなくなった。車体を傾けたまま、弱弱しく加速するKXが、最初のコブのど真ん中にぶつかって跳ね上がる。右側、一番低くなっているラインは、フープスに並んで走る水たまりが大きく心に映り込んで、どうしても近寄れない。速度を乗せて入れなかった凸凹に、あっという間に勢いを奪われて・・・10のコブを越える前に、すっかりバレてしまう。

コースで一番大きなRの左ヘアピンコーナーも、干上がり、白っぽく光っている。もとの長さに戻って、ちょっぴり延ばされたバックストレートだけど、その最後がいただけない・・・。小さな“突起”が、ちょうどブレーキをかけ始めるところにあって、減速したままコブを越えることになるから・・・いきおい“ケツ”が突き上げられる。コーナーへの準備が崩されて・・・まったく厄介なコブだ。

背の低いアウトバンクから切れ込み、テーブルトップを跳び上がる。座ったままでも何とかうまくさばけるのは、多少“テーブル”の形が変わったからかもしれない。そこから緩やかな弧の底をなぞって、二連ジャンプ。2つ目が低くてなだらかに見えるダブルジャンプは、ボロボロと拳ほどの土塊が転がって荒れてはいるものの、iguchi師匠やざりぱぱが言うほど危ない気がしない。

それでも手首を砕いてしまっては、仕事にならない。1つ目を中途半端に跳び出し、ゴツゴツした曲線をゆっくりなめて、アウトまで――強めに踏んだブレーキペダルでリヤタイヤを左に流すと、シングルジャンプの向こう、ロングテーブルトップジャンプの斜面が迫る。この先に・・・例の“coke screw”が待っている。

テーブルトップの正面、土色を失った小山が、左へと盛り上がる。角度の違う斜面と、それに続くワダチが3本。どこを通っても、行き着く頂上は一緒だ。そこに上がるとすぐ、今度は逆バンクへと落とされる――真っ逆さまに。はじめて4ストのエンジンブレーキが欲しくなった。明菜ちゃんの“DESIRE”を口ずさむ間もなく、右に回り込んでスパイン・・・続く2連ジャンプからスネークヒルを下るまでは、慣れた路面がクネクネとつながっていた。

下り斜面から覗く最終コーナーは、そこだけ鉛色。マシンの走った痕が、黒く弧を描いている。ダブルジャンプをひとつひとついなして、鉛色の右コーナーに跳び込んだ。減速して前に下がったまま、フロントタイヤが砂に刺さる――力を失った2スト85マシン、こうなるとフォームやらラインやらは関係ない。コースインする前に見たフルサイズマシンのように、エンジンが悲鳴を上げながら、砂の海をジタバタと進んでいく・・・。

両足を付いて何とか抜け出し、最後のストレートを駆ける――左に折り返して、やっとひとまわり。速度の乗りがイイ直線に、面倒なセクションが散りばめられて・・・新生MX408は、かなり忙しくなった。