一将Day ~1/2~

細身のレンズは、真っ黒。やわらかく、こめかみまで回り込んでいて、その上に白く太陽が光っている。親しみやすいタッパなのに、短く刈りこまれた髪とサングラスの組み合わせが、近寄りがたい空気を漂わせる。黒いグラスをはずしても、saitoさんが言う「“ガラ”の悪い兄ちゃん」が現れるだけ――ただ、そんなコワモテが、ここでは誰よりも好かれていて、すぐに人だかりができる。子供たちにも大人気。デニムの膝を“く”の字に開いて、子供たちの肩に手をおいて・・・街であったら、まったく誤解されてしまいそうな眺めだけど・・・。

昼休みの半分が過ぎた最終コーナー。午前中のワダチがはっきりと刻まれた砂の上、拡声器を片手にさっきの彼がたたずんでいる。

「サンドだからこそ、ていねいに、やさしく開ける」

「コーナーの曲がり口までは、スタンディングで入っていく」

「思い切り開けるのは、マシンが完全に出口を向いてから」

拡声器を通して出てくる声は、くぐもって優しく、まぶしい光にこぼれていく。ババッとか、グワーッとか・・・音だけの台詞じゃなく、その声と同じように、やさしい言葉を何度もかさねて、難所のサンドセクションの攻略法を教えてくれる。