makio!? 3

<7/23の続き>

11時ちょうど。日曜日のこの時間は、駐車場もガランとして、奥に広い。“アーリーアメリカ”の雰囲気を黒光りした全身に漂わせる、低くて長くてイカツイ“奴”らがつくばに引っ越して、店内はガラリと音が聞こえるくらいに変わっていた。クリアな橙色が、いきなり目に飛び込んでくる明るいエントランスは、大西洋を渡って、ヨーロピアン。欧風をまとったkawasakiのNinjaやsuzukiのGSX-Rが、その色の中にしっくりと収まっている。その一番手前に停まっているマシンの色違いが、ワタシのmakio号だ。

奥のテーブルで少し待たされ、社長直々に相手をしてもらって・・・3枚ほど、事務的な書類に署名してから、ようやく案内される。入ってきたのとは違う、車両がびっしりと展示されている場所へと抜けるガラス戸をくぐって、外で出た。すぐに目に入ったのが、特徴的なヘッドライト。フレームやガソリンタンクに、スイングアーム・・・すべてが直線で構成される立ち姿に、ヌメッとしたそこだけが、まるで生き物のように、やわらかに映った。

250EXC-Rをひと回りもふた回りも小さくしたマシンを、ぐるりとひと回り。マシンの左に戻り、拍子抜けするほど“普通”に配されたハンドルスイッチを確認してから、右手をイグニッションキーに伸ばす。そのままそれを右に回して、デジタルメーターの表示が落ち着くのを待って、エンジンを掛ける・・・と、セルボタンを押す前に、ハンドルグリップの周りをもう一度見てみるけど、何かが足りない。思わずエンジンをのぞき込もうとしたら、

「あっ、チョーク、ないですよ」

サービスのinaちゃんに言われてしまった。そうだ、コイツは人生初、記念すべきインジェクション車だ。何も考えずにセルボタンを押すと、あっけなくトトトッと目覚めるエンジン。そして、あきれるほど上品な排気音が、足下から吹き出してくる。レーサーに慣れた鼓膜に、市販車のそれが、やさしく響く。

<つづく>