夏練! 6

<7/24の続き>

白い雲が流れてきては、一瞬、太陽を後ろに隠して、山からの風に存在感を与えている。そして、ジャージ越しの肌に触れる冷たい風は、顔を出した太陽からの陽射しに、再びかき回される。火照った上半身を特設プールに沈め、濡れたカラダのままでパドックを歩いていれば、あっという間に汗が引いていく――夏は、山に限る。

午後1時を回って、先にコースへ出ていったのはryo。今度はすぐ後に続いて、忘れかけていた“練習”にいそしんでみる。気分がいい、今のうちに、とにかく跳ぶ。たっぷり跳ぶ。山肌から染み出た雨水が、うねった回廊を湿らせた先にある、下りながらの二連ジャンプ。今まで一度も跳び出せなかったのは、もちろん、下り坂の途中にあるから・・・。85ccの小さなエンジンでも、全開にするには勇気が要る。その恐怖を割愛してくれるのが上り勾配なのに・・・あいにくココは下り勾配。おまけに手前で左、右と切り返してから短く加速しなきゃいけない。跳び出す際まできっちり開けていけるか――一番苦手なことを、恐怖が上乗せされるココで試される。

リヤタイヤの回転を止めてしまったブレーキペダルから、ゆっくりと右足の力を抜いて、浮かせた腰を伸ばしながら、左足のつま先をチョンと蹴り上げ、ギヤを3速に入れる――落ち込んだエンジンの回転を左の人さし指で呼び戻し、左旋回からKXのフロントフォークが斜面に当たって縮むまで、右手を戻すのだけは我慢する。カラダが後ろに傾いた瞬間、両ひざに力を込めて、ステップの上で跳び上がる・・・。

<つづく>