夏練! 終

途中でryoとマシンを取り替えて、「全然すべらないよ」と言う、4ストエンジンで坂を駆け上がり、コーナーを回る。でも、言うほどには思いどおりに動いてくれやしない。試しに湿った暗がりの中のアップダウン(正確にはダウンアップだ)、下りきって左に旋回しながら上っていく辺りで、右手をひねってみると・・・KXと同じく簡単に、むしろ派手に真横へリヤタイヤが流れた。真っ平らな河川敷では気になることもなかった粗雑な右手に、まったく腹が立つ。あとで訊いたら、「あっ、オレもそこでひっくり返りそうになった」と、左足を地面に蹴りつけるマネをして、悪びれもせず答えるryo・・・「そういうのは、先に言っとけ」と、コブシで頭をこづいてやる。まあ、それでも悪いのは、この右手なんだろう・・・。

重い車体とブ厚いトルクを扱いきれず、あちこちでCRFが暴れまくる。まっすぐ走っていかない赤い車体を尻目に、ペパーミントグリーンのウェアとKXの組み合わせが、涼やかに加速しては、目の前からどんどん離れていく。遠くなる背中と、森にこだまする2ストの高周波音――やっぱりコッチのほうが「様になってるな」と眺めながら、なぜだか“イラッ”と腹が立ってきた。もう一度、自分たちのマシンに戻ってから20分を走りきると、後ろに着けていたryoのCRF150RⅡが、先にパドックへと引き上げた。それより1周多く回ってから、パドックを縁取る砂利道をたどり、KXがBongoの元へと帰っていく。

“二年越し”のダブルジャンプ。その変わらないふたつのコブを、勢い跳び越せたこと。そして、車体を立ててから半クラッチを当てられるようになったこと――いや、頭を空っぽにして、とにかく思う存分全開にできたこと――それが、何よりうれしかった。最後に、なみなみと井戸水が張られた特設プールにryoと二人、下着姿で飛び込んで・・・あまりの冷たさに顔を見合わせては、ただ笑って・・・まだ太陽が、青い空の真ん中辺りに止まる午後4時、土埃にまみれたBongoに乗り込み、緑のパドックを後にする・・・日に焼けて赤らんだ頬をゆるませながら。