秋味

それまでぼやけていた街の線が、けさは妙にしっかりしていた。通りの角に建つアパートの白い壁は、まっすぐ垂直に延び上がり、生け垣の緑は、その一葉一葉が光っていた。昨日の半端な雨は、風にゆられるように流されて、ちょっと切ない朝がきた。

朝の太陽は、いつの間にか低くなって、瞳の奥に光が差し込んでくる。薄く青色を刷いた空には、白く月が浮かんでいる。北からの風は、さらりと吹いていて、撫でる稲穂をすぅーっと乾かしていくよう。ベタッとはり付いてくるような暑さが、このまま消えてしまうのは・・・何とも口惜しい。

一年でいちばん過ごしやすい、それでいて心苦手な季節が、すぐそこまでやってきた。何となく広がる、この切なさをまぎらわすには・・・あとは食べるしかない。秋は・・・そういう楽しみのある季節だから。