雨の日曜日

廊下の扉が音を立て、誰かの気配で目が覚めた。「あれ、またやっちまったか」・・・てっきりアラームをかけ忘れたと思いこみ、近づいてきたryoが触れる前に目を開いた。

「んん・・・どうしたあ」

「すんげー、雨。だから、今日は無理だわ」

どうやら外は雨模様、それも尋常じゃない降りらしい・・・。

「今、何時?」

「えっと、4時半ぐらいかな」

「で、何?ぜんぜんダメな感じ?」多少の雨なら走る気でいたから、思わず声が大きくなる。

「うーん・・・とにかく大雨だよ。止みそうにないし・・・」ryoの見立てでは、走るなんてとんでもない豪雨のようだ。

「そっかぁ・・・しゃあない。わかった」

「じゃあ、今日は無しってことで」

「ああ。まあ予報どおりじゃ・・・しかたないか」

ryoが出ていくとすぐ、真っ暗な寝室のなか、出窓を叩く雨音が激しくなってきた。6:00に合わせてあったSOL22のアラームを解除して、もう一度まくらに頭をなじませる。昨日の無茶な走りで、背中の筋肉が強ばっているから、ちょうどいいのかもしれない・・・。

9時になってやっと、のそりのそり居間に下りていく。湿気の混じった空気が、ムワッとカラダをつつんだ。雨戸と窓ガラスをほんの少し開けて、部屋の空気を扇風機でとばしてやる。氷をたっぷり入れたポットに、熱々のレギュラーコーヒーを落としているうちに、今度はryoが下りてきた。大粒の雨が砕け散って、出窓の向こうは白く煙っている。

「今日と明日、中止だって。フリー走行は中止しますって」

ローチェアーに寝そべるようにしていたryoが、スマホを眺めながらブツブツつぶやいている。うれしいような悲しいような、そんな雨の日曜日の始まりだった。