片道100kmの贅沢 3

<9/16の続き>

先を仰いでも左を向いても、似たような雲に覆われていて、見分けがつかない。スモークシールドを右手でこじり開けて、空に目を凝らすと・・・西のほうが少しだけ、色が明るかった。日光ではなく、赤城のふもとで反転――即決した行き先は、あいかわらず慣れた、代わり映えのしないところ。「せめてもうひとつ」と、「焼きトウモロコシの昼メシ」を“追加”して、青に変わった信号を左に折れていく。

国道17号線のバイパスを、いつもの「上渕名」で下りて、県道を繋ぎながら赤城山を目指す。肝心の山容は雲に霞んでいるけど、国定、新里を過ぎれば、道は勾配をつけ始め、気分も盛り上がってくる。もっさり前を走る大型トラックを、センターラインが白くなるのを待ってから抜き去り、再び辺りを気にする走りで、国道353号線に向かう。三連休を楽しむファミリーカーの居ないアスファルトが、ゴキゲンにうねり始めた。

腰がシートからズレていかないように、イン側のアスファルトに肩が落ちていかないように、用心して走る。左にいってすぐ右・・・S字コーナーでも、ステップに立ち、中腰で浮かしたカラダを左から右に移し替えるのもタブーだ。とにかく“リーンイン”にならないように気をつけた、赤城山の南面をなめる国道を走り抜ける。どこまで走っても、その先をふさぐような車影は見えてこない。出がけに届いた8耐のビデオを見てこなくて・・・ホントに良かった。

右手を戻すだけで、何かに引っかかるように減速を始めるduke。もちろん、このエンジンブレーキもなじんじゃいけない。それなりの速度のままで回ろうとするdukeを抑え、リーンアウトでコーナーを立ち上がる。手足の短い、不格好なケビン・シュワンツの出来上がりだ。それでも気を許すと、知らず知らず内側のヒザが開きかける。厚みを増していく曇天の下、「畜産試験場」の交差点を右に曲がれば、あの香ばしい“昼メシ”まで、もう数百メートルだ。

<つづく>