やばっ! 4

いくつも雲の河をくぐり抜けて、鮫川村は空が青く抜けた下にあった。「古舘」の小さな街角を右に左に曲がり、いわきへ続く県道に出る。伊王野からbongoのハンドルはワタシが握っている。細くうっそうとした県道は、あちらこちらで拡張工事が進んでいた。急峻な山肌に、錆の浮いたユンボが、心許ない様子で置き去りにされている。いきなり太くなったアスファルトが大きく上って下ると、もうすぐ見えてくるはずだ。薄いアルミサッシの向こうに、乾物やら日用品やらを並べただけの、山村にはよくある店先。初めて通ったあの日、ここで道を訊ねたことがなつかしい。再び広がったカーブを上った先で、くっきりと原色に塗り直された看板が待っていた。その手前で、ゆるやかに右へとハンドルを回す。空に向かって少し左に弧を描く山砂がひと筋、緑の中へと消えていく。人の話し声しか届かない、静かな朝だ。時間はかかってしまったけど・・・やっぱりココに来てしまった。

<つづく>