やばっ! 6

新しいMX408で試すはずだったキャブセッティング。メインジェットを10番ほど大きくして、地を這う4ストの排気音も、少し太くなったような気がする。アクセルの開閉ももどかしそうに、ヘルメットにScottのゴーグルを合わせて、トレーラーの向こうにくぐもった音と消えていくryo。一瞬の森の静寂を、けたたましく吠えるCRFのエンジンがぶち破る。山にこだまする音から少しズレて、大坂のてっぺんに白い背中がのぞいた。「セッティング」なんて、そんなややこしいことは一切関係なし。ココでは、坂に向かって思う存分、右手をひねるだけでイイ。遅れてやって来たニセmanabuが、やたらと慎重に駆け上がっていくのが、ちょっと可笑しかった。

1時間も経てば、さすがに感覚をつかみ、YZ250Fにも勢いが出てくる。その青い車影に追い立てられて、CRF150RⅡの周回速度も上がってきた。事もなげに、弾むようにして日陰の坂を下るryo。離れていく背中が、パドック前のテーブルトップジャンプを越え、大坂の上でさらに小さくなる。「ニードルを太くしたのは間違いだったか」ひとつ息を吐いて、元気のない2ストエンジンに左指で喝を入れる。カン高い排気音を揺らして、KXがCRFの後を追う。ひさしぶりの“追いかけっこ”は、ただ疲れているのか、セッティングが薄いのか・・・どうにも“分”が悪い。あっという間に勘を取り戻す後ろ姿。頼もしくも癪に障る・・・。

<つづく>