All right CHIBA! 4

駅前のアウトレットモールを、さらっと眺めていたら、細かな雨が漂いはじめた。雨は冷たい風になって、カラダを濡らす。時計の長針は、ほとんど真下を向いて――15時30分、いよいよ会場の時間だ。あいかわらず空から濡れた風が吹いては、すべてをしっとり包んでいく。二人のマウンテンパーカーも、濡れそぼち光っている。こんなとき、フードの付いたパーカーはありがたい。傘をひろげる面倒がないから。そのまま会場に入り、通路かどこかで着替えればと思っていたら・・・とんでもない!ペデストリアンデッキの片側を、人が埋めつくしていた。入場待ちの列・・・やっぱり、そうだよね。「武道館の時も、こんな感じだったよね」、ryoが何だかうれしそうにつぶやく。リユニオンツアーの東京ドームから日本武道館、そして幕張メッセ――彼の3度のライブ体験は、すべて会場がちがう。それを楽しんでいるかのように、並ぶ人の列の最後尾を、歩きながら目で追いかける。雨が少しだけ強くなってきた。

長い列は、今にもホールの長い壁を折り返そうとしていた。少し待つにも、これ以上濡れて居たくもない。パーカーからは、じわり雨の冷たさが伝わってくる。「とりあえずクルマに戻って、シャツ、着替えてくるか」、ワタシの言葉にryoがうなずいた。ここに出てきたエレベーターが、ちょうど目の前。今度はいくつか90°に折れる階段を使って、暗がりへと降りていく。暖色の灯りの中、まとわりついた外の冷気が蒸した空気に溶けて消える。F20の柱まで歩くうちに、パーカーもすっかり邪魔になってしまった。bongoのドアを開放して、“タイプA”のTシャツを、素肌の上にアタマからかぶる。急ごしらえで乾く間がなかったのか、染料の臭いがツンと鼻をつく。運転席と助手席、それぞれのシートに収まると、動かないクルマの影から、ポールとジーンの声が聴こえてきた。“Shout it out loud”。今夜のセットリストの2曲目――時間が経つのももどかしいKISS ARMYが乗るセダンの窓をすり抜けて、軽やかなビートが宙を舞う。

<つづく>