You want the BEST. 6

ヘルメットをBongoの荷室にころがして、狭い日陰に据えたビニールイスの背もたれにドカっとカラダを押し当てる。白を基調にしたJTのモトクロスパンツ、その右膝からアルパインのブーツにかけて、ざらりと土がこびりついていた。バックストレートの終わり、張り出したバンクの中程でマシンから転げ落ちたらしい。金色の髪のオトモダチには、きっと見られていたはずだ。「これは新しい土だねぇ。ココでついたのかなぁ?」と、そんなryoの顔を見て、nagashimaパパが楽しくなじる。季節がもどったような、あふれる陽光は、獅子の閉ざされたまぶたにも眩しく落ちていた。

夢中になることはなく、ぽつりぽつりと言葉を紡いでいくnagashimaパパ。その笑顔が向けられるようになったのは、いつの頃からだろうか・・・頑張って、頑張って、頑張って――追いつかないその背中を見つめ走り続けて、やっと向かい合い、微笑みかけてもらえるようになった。くたびれたYZ85を、「そろそろ買い換えたい」と、「ずっと待ってたけど・・・150は出てこないみたいだから」と、身の上を楽しそうに教えてくれる。「もう速くはならないんだから・・・とっとと追い抜いてくれなきゃ」、世辞か本気かよくわからない台詞を、笑い声で吹き飛ばすパパ。もうすぐ二回目の出番だ。

<つづく>