ジングルベル♪

時計の針の進みは、思いのほか早くて・・・予定の4時を1時間も過ぎて、ようやく小さな会議室から解放された。カン高い電子音とともにやってきたエレベータに乗り、14階から一気に下りていく。外側をつつむガラス窓には、藍色の宵闇が映りこみ、正面にそびえたつ高層マンションは、薄い橙の残った西の空に、青ざめた影を伸ばしていた。こうなると・・・空が黒く塗りつぶされるまで、そう時間はかからない。新幹線と並行して走る横須賀線に乗って北上。西大井までひと駅戻ってくる間に、外は真っ暗だ。プラットホームを発車して、列車は夜景に色づく品川の街へ・・・駅舎にすべり込む黒い車窓に、緑色の角ばった大きな木が見えた。思わず腰をかがめて目を凝らすと、窓の外に見えたのではなくて真後ろ。ちょうど背中越しにあるプリンスホテルが映りこみ、緑に光っていたらしい。てっぺんから一マズずつ、左右に緑のコマが増えていき・・・きらびやかなモミの木は、空いっぱいにひろがるよう。それにしても、都会の夜は気ぜわしい。もうかすかに、ジングルベルが聴こえてくるようだ。