ただいま!

心おきなく跳びあがり、気持ちよく放物線を描く。フィニッシュラインの先、斜面におりたKX85Ⅱのシートに腰を落とし、左に大きな弧を引いて、コースの幅いっぱいに立ち上がる。昔を思い出す“アウトインアウト”は、ワタシにとって理想的なライン。そのあいだ、KXの小さな車体はずっと傾いたまま、それでも前に出るこの感覚。前後に新品のタイヤをおごられたみたいに、2スト85ccがしっとりとした赤土を食んで加速する。これなら、ダートトラックばりの“逆ハン”も「いけるんじゃないの?」と思わせるほど――saitoさんの手入れと、ほどよい雨と気温のおかげか、今日の土は極上だ。おもわず左のヒザを路面に突き出しそうになる。半開きになった左ヒザをあわててシュラウドに押し当てて、ひとつ目の“障害”。名物のテーブルトップジャンプの前で、右の人さし指がブレーキレバーを引き寄せる。ハンドルバーがぐぐぅーっと下に向かい、フロントフォークが一気に短くなった。

<つづく>