この次は・・・ 前編

最後の10分、大人はみんな“上がって”しまった。ryoもiguchi&okano師匠も、MCの強者もみんな・・・。コースに残ったのは、小さくって元気のいい子どもたちばかり。張り合いのない10分になりそうだけど、さっきのクールで#129のCRF150RⅡに逃げきられて、このままでは終われない。二日続けて酷使されて、アイドリングの音も弱々しくなってきた2スト85ccエンジン。操るカラダのほうにも、あちこち、かなり痛みが走っている。「さあて、あと10分」、ヘルメットの奥でそう呟くと、右手を一回、思いきり絞り込んでから、左のつま先でちょこんとシフトペダルを踏みつける。uchinoさんに教えてもらって短く詰めたサイレンサーが、静かになったパドックに、カン高い排気音が響かせる。その音の端、パドックの向こうでuchinoさんはもう、パーカーにデニムの私服になっていた。

<つづく>