ただいま! 4

<11/20の続き>

立ち上がり、緑の車体を急いで垂直に起こす。ラインの上、固く小さな凹みができているのがわかる。これに弾かれると、ひとつ目のコブで大きく振られて、少し慌てることになる。両ひじを張って踏みつけたり、わずかにラインをずらして避けてみたり、覚悟をして日陰のゆるんだ土に分け入ったり・・・。ただ、それだけを気をつけて走れば、いつもの長い直線。コースでいちばん好きな場所に変わりはない。快走する直線、2スト85エンジンが全開になる一瞬だ。その先を見つめる瞳のなかに、なつかしい黄色のマシンRM85Lが映りこむ。それが、“森”で出会ったRMで、お店の“通販”のお嬢さんだということを、さっき、ざりままに教えてもらったばかり。これだけ離れていては、特徴のあるくぐもった排気音が聞こえてくるはずもない。消えた後ろ姿を追いかけて、右手にチカラが入る。そんなざりままは、今日もコースの外。スネークヒルの下りでお留守番している。骨のくっつき具合はいいようだけど、場所が場所だけに「大事を取っている」のだと言う。そうこうしているうちに、復活したバンクが一気に目の前に迫ってくる。グリップを握りしめている右腕が、疲れて言うことを聞かなくなって・・・ブレーキレバーを引くチカラも薄くなってきた。

<つづく>