ありがとう! (前編)

bongoのバックドアを跳ね上げる。最後まで暖房を強めにした運転席から外に出ると、キリッとした夜気に包まれて、小さなカラダがもう一回り縮んだような気がした。引きずりだしたアルミのラダーを荷室の後ろで斜めに立てかけて、重たいCRF150RⅡから先に、ハンドルとリヤフェンダーにかかった固定ベルトをゆるめる。リヤタイヤに続いてフロントタイヤがラダーの上にかかり、CRFの動きは、右の人差し指一本で制御される。ブレーキパッドの“アタリ”も出たようで、ようやくryoにも“違い”が分かるようになったらしい。わずかな入力でフロントタイヤは回転を止めてみせる。小刻みにレバーを握ったり放したり、ゆっくり平らなコンクリートまで降ろすと、ガレージの前まで押して歩く――まだ7時前だというのに、ずいぶん月明かりの冴えた夜だ。

お次はKX85Ⅱ。こっちはハンドルバーにかけられたベルトをゆるめれば、車体が自由になる。三角スタンドを外してリヤフェンダーに載せ、ラダーの位置に合わせるように、リヤタイヤを少しずつ左にずらしていく。リヤタイヤの外周がラダーと一直線になってから、今度はフロントタイヤがラダーの中心線と重なるようにハンドルを動かしながら、荷台からKXを後ろに引いていく。フロントブレーキレバーにかかる指は同じでも、コチラのほうが入力に比例しているように感じるのは・・・カワサキだからか?そのままCRFと同じようにゆっくり車体を降ろしていくと、リヤタイヤがラダーに擦れて、ギュギュッと鈍い音を上げて引っかかる――。

<つづく>