ありがとう! (後編)

「ん?」と思い、ラダーから車体が落ちきったところで、シートの上からリヤタイヤをのぞき込む。そのまま手のひらで押してみると・・・ベッコリとへこんだまま、戻らない。「あー、やっぱりパンクはしてたんだ・・・」、瞬く星を見上げて、独りごち。「ヤツの神通力もココまでか」。それでも一日走れたんだから・・・muraには大いに感謝すべきなのだろう。たしかによくすべったし、フィニッシュジャンプで風に煽られたときは、さすがに覚悟したけど・・・何事もなく車体が残ったのは、何かに守られていた気がしないでもない。

夕べ、2台を積み込む前に確認したとき、KXのリヤタイヤが0気圧だったのは・・・見間違えではなかった。とりあえず空気を入れて、そのとき小声で、「“現場”でチューブ交換するの、ちょっと面倒だから・・・何とかしてくれよ」とつぶやいたことを、空の上、覚えてくれていたようだ。ココは正直に、ヤツに礼を言うところなのかな?「ありがとう!」と。転びもせず怪我もせず、存分に楽しめたんだから――。