月と朝と星と夜と

北西の地平が、雲をかきわけて青白く光っている。その真ん中で、丸く大きな姿をした月が、朝陽を思わせるようにポンと浮かんでいる。そこだけが明るくて、これから空に光が満ちていくように惑わされるけど、東の空は雲に覆われて黒ずんでいるだけ。外周のぼやけた月は、薄い黄色のまん丸で、ほとんど朝陽と見紛うけど、そこから空に昇ることはない。この月が沈んで夜が明ける。7時になるかならないかの辺りで、ゆっくりと薄黄色が見えなくなっていく。沈んで明ける、不思議な夜明けだ。

朝のひとときからちょうど半日経って、月が再び姿を現した。帰り道、車窓が向いた東の空に、ふた回りほど小さな丸が白くきらめき、地平に浮かび上がっている。急行電車が通過駅を過ぎていくたび、少しずつ高度を増していく月。南天には綺羅星がひとつ、その月を待っているかのように揺らめいていた。暗くて沈みきった空が、月の周りだけ、白く華やいで見える。冬の夜は、明けるときと違って、とても静かに動いていく。艶やかな彩色の似合う闇には、心惑わす星がいくつも散らばっていた。