MC戦記(第1戦) 5

<2/3の続き>

ひとたびスケジュールが動き出すと、周りの人もマシンも忙しない。そして、張り詰めた雰囲気をあおるように、無機質なアナウンスが公式予選の招集を繰り返す。N150クラスの練習走行は、9時11分から15分間。分刻みで始まる公式練習と、10分+1周の決勝レース。二つ合わせても、いつもの練習の一回分ほどなのに、気が急いてしかたがない。フワフワしたココロの上、ゆっくりと昇っていく太陽だけが、辺りをゆるく照らしていた。

#29のiguchi車が静かにパドックを離れ、その後ろを、ちょっぴりにぎやかなCRF150RⅡが付いていく。チームメイトの2台に少し遅れて、ようやく2サイクルのカン高いエンジン音が白煙とともに吐き出された。サイレンサーのグラスウールを新しくしたryoのCRFに対して、ワタシのKXには、出戻りの部品が組みこまれている。待っていた“新品”はついに届かず、捨てずに取っておいた“中古品”――サンスター製の53丁のリヤスプロケットが、真新しいタイヤをぐいんと回した。

<つづく>